第二期 第2回京都クオリア塾 / 平成28年11月19日
第2回は「陶芸史からみる日本の世界戦略とソフトパワー」をテーマに、美術史家で京都女子大学生活造形学科准教授の前崎信也氏が問題提起。前崎准教授はまず、近代までの陶磁器は世界の科学技術の最先端の結晶と呼べるものであったが、今や「伝統工芸」を代表する一分野になってしまった。ではなぜ最先端技術が伝統になったのだろうか、更に「文化」は何のため、誰のために存在するのか、茶道や歌舞伎など日本独自の伝統文化であると信じているものがいつ、何の為に生まれたのだろうか、と問いかけました。
鎖国中もオランダ東インド会社を通じて古伊万里や漆などの工芸品がヨーロッパへ輸出されましたが、日本が世界市場で評価を得ることができたのは、明時代の貿易禁止令、即ち「海禁政策」がとられた時と、アヘン戦争などで清の時代が弱体化した時のみ、と前崎准教授は指摘します。長崎の出島近くには中国人居留地が設けられ、憧れの唐物を輸入するなど、中国は江戸時代の日本にとって「師匠」でした。
ロンドン万博(1862年)を遣欧使節団が視察後10年を経たウィーン万博(1873年)に日本政府が初めて公式参加、そしてセントルイス万博(1904年)では当時の町衆たちに人気のあった煎茶ではなく、中国風ではないということから「抹茶」が披露される。日本独自の文化、即ち日本人としてのアイデンティティを世界に向けての発信が開国後の最重要テーマだった、と言える。また、それまで総合芸術であった工芸は、万博出展を機に、陶磁器、漆など分野ごとに分けられていきます。
今、再び世界の地図が変わろうとしている時、私たちは日本と中国との関係を「文化」を基軸に捉えなおす必要性があるのではないか、近くて遠い国ともいえる中国とどう向き合うのか、を考える機会をいただきました。
京都クオリア研究所の西村周三所長も加わってワールドカフェを開催した後、会場を徳正寺(京都市下京区)に移し、藤森照信さん設計の茶室で煎茶を楽しみました。お点前は住職の秋野等さん、異空間での美味しいお茶にしばし日々の喧騒を忘れました。そしてこの日の最後は、京都市芸術大学の森野彰人准教授によるワークショップ「模様で遊ぼう」、湯呑茶わんに思い思いの模様を描きました。焼き上がりが待ち遠しい、そして陶磁器を通して日本文化と中国、世界との関係を知る、きっかけをいただきました。
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人間ひとりひとりの深く高質な感性(クオリア)に価値を置く社会、これは各人の異なる感性や創造性が光の波のように交錯する社会ともいえます。
京都からその実現を図ろうと、各種提言や調査、シンポジウムなどを開催した京都クオリア研究所ですが、2018年に解散したため、㈱ケイアソシエイツがその精神を受け継いで各種事業に取り組んでいくこととなりました。
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