京都クオリア塾/クオリア京都
第十期 第1回京都クオリア塾 令和6年5月11日
第1回 2024年5月11日(土)10時~15時
「分断の時代、混迷する世界を読み解き日本の近未来を展望する」
中西 寛(京都大学公共政策大学院教授)
イスラエルとハマスの戦い、国内では保守政党と旧統一教会との癒着など宗教が関わる分断が顕著になっている中、佐々木特別教授は仏教の誕生から今日までの変遷を辿りながら日本と仏教の関係を分かり易く語りました。
四聖と言われる孔子・釈迦・ソクラテス・カントは、活躍した時代や国は違っても、現代に生きる私たちに生きるうえで大切な教えを与え続けている。その中でも特に日本との結びつきも強いとされる釈迦は、生産活動をしない出家をサポートする「律」というシステムをつくり、精神集中による創造のパワーをうみだした。仏教はインドから、中国、そして日本へと広がるが、日本へは鑑真和上によって伝わった。聖徳太子は外交の道具として仏教を導入、大和朝廷時代には神仏習合が始まる。平安時代には天台宗と真言宗の本格的密教が盛んとなり、鎌倉時代には浄土宗、日蓮宗、禅宗などの新仏教が誕生した。
「律」のない日本仏教は社会的武装組織と戦国武僧が同じレベルで戦うことで、政治、宗教体制を纏めていった。江戸期に入ると檀家制度が生まれ、寺は政治の役所として体制に組み込まれていった。そして明治時代の神仏分離、戦後の社会体制の変化などで仏教は今大きな転換期に立たされている。このように日本仏教の変遷を辿られた後、仏教が残してくれた自我構築をどうするのか、知恵を諭す仏教集団をどう創るかが課題である。僧侶はもともとは在家でその後出家したのであり、新しいカタチの運営が急がれると強調されました。
そして最後に、皆が共通して人間を信じ、自分の人生を組み立てることそのものが仏教のアイデンティティであり、真理は求めるが科学に基づいて自分の人生を構築するのは如何なものかと問いかけました。