第七期 第2回京都クオリア塾 令和3年6月26日
6月26日(土)10時~14時
真実とは何か、メディアの役割は何かなどが問われている今、メディア史研究の第1人者、京都大学大学院教育学研究科教授、佐藤卓己氏を講師に迎えました。
昨年2月のトイレットペーパー買い占め報道は記憶に新しいところですが、Twitterで「不足」と拡散され、その後テレビニュースで伝えられると一気に拡散。佐藤教授はデマだと報じられてもなぜ買い占めは起こったか、と問いかけます。そして80年前のアメリカではSF小説「火星人来襲」をラジオ放送した所、逃げ回って死者が出る騒ぎとなったという。
ヒットラーやルーズベルトはニューメディアとしてのラジオをプロパガンダとして活用したのはご存じの通りだ。このプロパガンダが第2次世界大戦後にマスコミュニケーションという言葉に代わった、デマや間違った情報が行き交う社会こそ健全と言えるのではないだろうか、と問題提起をします。
誤報もうわさもメディア流言もなくなることはないとして、正しい情報のみを伝えるという「真実」の要求は検閲の正当化に繋がる、と語りかけながら、曖昧な状況に巻きこまれた人々がそれぞれの知識を寄せあつめ、有為な解釈を行うコミュニケーションが流言であり、受け手=送り手の感染メディア、と位置付けます。
新聞報道が信頼されるようになったのは第2世界大戦後のことだそうで、情報のグローバル化の下、AIによるフェイクニュースの消去で快適な社会が生まれるとは言えない。日本においてもSNSの空間に様々な情報があふれているが、むしろこれが健全な社会であり、曖昧情報に耐えるメディアリテラシーこそ必要と結びました。
この後、メディアリテラシーを高めるためにはどうしたらよいか、オピニオンはどうつくるのか、などについて意見交換するとともに、マスコミュニケーション、ジャーナリズム、メディアの違いについて学ぶ機会となりました。