第五期 第5回京都クオリア塾 / 令和元年10月19日
発生生物学という耳慣れない学問について、高橋教授は「記憶がないだけで皆がたどってきたのです。自分もかつてはこうだった。」と思い起こしてほしいと言いながら、紐解いていきます。生きた胚を操作できる便利なモデル動物としてニワトリを例に、発生学へと導く高橋教授、受精卵が細胞分裂しただけでは肉の塊しかならない、分化が加わってヒトとなるのです。骨格筋や脊椎になる体節に遺伝子が働く文節の仕組み、さらには神経幹細胞へと話を進め、「はみ出しものこそ重要」と強調します。 そして脊椎動物にあるしっぽは、胴体の続きではなくSN細胞として新しい進化の過程で生殖器や排泄器を生みだした。しっぽは進化のためのイノベーションであり生存戦略であった、ということです。 高橋教授の博士課程終了後に学んだフランス発生生物学研究所のニコル・ル・ドワラン博士が言われた「オリジナリティこそ命!」は一番重たい言葉であり、死ぬまでの課題と語りながら、もう一人の師である岡田節人京大名誉教授(2017年没)の「研究者には余裕がないとあかんのや。こころ遊ばせてみたらどうや!」が今こそ必要であり、「○○の役に立つといわれる研究ではない研究が、次世代をつくる」と結びました。 知的活動を伴う強い好奇心の醸成は塾生に人生と仕事の関係を考える機会をいただきました。